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投身自殺

ある日、女子高生のA子さんが学校帰りに駅で列車を待っていると、反対側のホームに同じ学校の制服を着た子がいるのに気づいた。

それは同じクラスのB子さんだった。
確か、その日のB子さんは体調が悪いとかで学校を休んでいたはずだった。

よく見ると、うつろな表情でぼんやりとしており、こちらに気づいた様子も無い。

A子さんは、B子さんとさほど親しいわけでは無かったが、学校を休んだ子が制服を着てぼんやりと立っているのはさすがに気になり、近寄って声をかけてみようと思った。

しかしその時、B子さんのいるホームに列車が入ってきた。

B子さんはその列車に乗るのだろうから、もう間に合わないとA子さんが思った、その瞬間!

うつろな表情のB子さんは、ホームに入ってきた列車に飛び込もうとした。

あっ! とA子さんが思った時には、すでにB子さんの足はホームから離れていた。

助けられるわけもないが、A子さんは思わず身を乗り出した。

と、その時。
A子さんはドン! と何かもの凄い力によって突き飛ばされた。

ただでさえホームの端で態勢を崩していたA子さんは、線路に向かって飛んでいった。

A子さんの目に飛び込んできたのは、猛スピードで向かってくる列車と、引きつった表情で急ブレーキをかけようとする運転手の姿だった。


……さて、問題となるのはここからである。

A子さんはあまりにも凄い力で飛ばされた為、列車の入ってきた線路を飛び越えて、向こう側の線路に落ちた為、列車にはぶつからなかった。
その為、肉体的な怪我は骨折だけで済み、命に別状は無かった。

駅員や警察の調べでは、「普通の女子高生が助走もつけずにこんなに飛べるわけが無い」との事で、誰かが彼女を押したに違いないのだが、調べた限りではそんな人物は見当たらない。

そして、A子さんが見たというB子さんの投身自殺。

これはそもそも、その時間、反対側のホームに入ってきた列車自体が存在しなかったという。

仮にそんな列車が入ってきていたのなら、反対側の線路に落ちたA子さんは、間違い無くその列車にぶつかっていたはずである。

A子さんはありもしない同級生の自殺の幻覚を見た後、何者かに突き飛ばされたという事になるが、実は、A子さんが線路に落ちたのと全く同じ時刻に、8つも離れた駅でB子さんが投身自殺をしていたというのだ。

つまりA子さんは、遠く離れた駅で起きた同級生の自殺を目の前で見たという事になる。

ちなみに、A子さんはあまりのショックで精神が不安定になり、精神科の病院に通っているという。
そして、その路線では現在も人身事故が絶えないという。

その大半がよくある投身自殺として片付けられているようだが……。

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