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弱気になったらダメ

夏の出来事。
学生だった俺達は、夏休みに男5人でキャンプに行こうってことになった。

ボロボロのワンボックスカーで**県の山に向かった。
道中、キャンプ場はいくつもあったんだけど、酒を飲んで騒ぐことが目的だったので、周りに他のキャンプ客のいない(当然民家も無い)山奥の河原にテントを張った。

誰に気を使うことなく、BBQを食いながらビールとワインを飲んでドンチャン騒ぎをした。俺達の声以外には、川の音と虫の鳴き声しか聞こえない。

深夜になるとみんな酔っ払って、誰からともなくテントで寝だした。
俺も寝ようとテントに入ったんだけど、山の夜は寒くて寒くて寝れたもんじゃなかった。

俺はテントで寝るのをあきらめて、車で寝ることにした。
車の後部座席をフルフラット(ベッド状態)にして毛布をかぶって寝ていると、後部座席のドアを外からコンコンって誰かがノックした。

俺は「テントで寝ていて寒くなった誰かが避難してきたな」と思いながら、スライドドアをガララと開けた。

その瞬間、幼稚園児ぐらいの男の子が車内に入ってきた。

「!!」

俺はビックリして車の一番後ろまで転がった。

車内に入ってきた男の子は後部座席から運転席に行き、シートに立って、オモチャの車で遊ぶようにハンドルを動かしている。

こんな山奥にこんな小さな子供がいるわけない!
俺はハッチバックを内側から開けて外に転がり出て、裸足で河原まで走って行き、テントで寝ていた4人を叩き起こし、今起こった事を半泣きで説明した。

「寝ぼけてたんじゃないのか?」
と1人の友人が言ったとき、

ビーーーーーーーッ!!
ビビーーーーーーーーッ!

と俺達の車のクラクションが鳴った。

「…これはやばいな」

震えた声で1人がそう言った。

俺達はテントで夜が明けるのを無言で待った。クラクションが鳴ったのはその2回だけだった。

30分ぐらい経った頃、イライラしだした1人の友人が、

「幽霊かナニか知らないけど、こーゆーときは弱気になったらダメなんじゃね? 子供なんだろ? 『どこか行け!!』って怒鳴ったら消えるんじゃないか?」と言い出した。

そのとき、テントの入り口から男の子がヌッと中に入ってきて、


「 お 前 た ち が ど こ か 行 け 」


と無表情で言った。


そこから記憶が無い。気付くと朝になっていた。逃げるようにその場所を離れた。

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