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浮遊する仏壇

長距離運転手やってるんだが、有料トンネル代ケチって夜中1時頃旧道の峠を走ってた。
道は狭いし途中何軒も廃屋があったりアスファルトはヒビ、穴だらけの気味わるい道。
その時は霧が濃くて前に4tトラックがいて、まぁ煽らない程度にくっついてゆっくり走ってた。

下りの左カーブにさしかかった時、前のトラックの左側に光る霧の塊みたいのが見えた。
その塊は前のトラックの助手席側の窓辺りを、車と数秒間同じ速さで飛んでいるように見えた。
「なんだろ、前の運転手気づいてないのかな」って思ってたら、光る霧の塊が止まったので、
こんどはオレのトラックがその塊に近づいていくかたちになった。

前方を気にしながら注意して霧の塊を見た。大きさは横1メートルくらい。
縦50センチくらいの長方形。その四角はまっ白ではなく緑色っぽく光る部分も見えた。
そして助手席の窓の真横まできた時、四角の正体がわかった。

それは空中に浮遊する仏壇。中央に位牌らしきもの、周りにも何かあったけどはっきりわからない。
それが助手席の窓のすぐ外側を浮かんでついてきた。
けどほんの3秒ほどですぐに後方へ行き、左のバックミラーからも消えた。
 
峠を抜けて携帯の電波が届くとこまできたら、
嫁からメールが届いたのでまだ起きてると思い嫁に電話した。
現在地などを話し、さっき見た出来事を話そうと、
「さっき和田峠で変なモン見…」
ここまで言ったら息が吐けない。

はっ、はっっなるだけでしゃべるどころか呼吸ができない。
嫁の「大丈夫?どうしたの?」って声も、
昔のアナログ電話みたいなノイズがだんだん大きくなりかき消された。携帯は勿論デジタル。
そのノイズがだんだん静かになってきたら、こんどは人の苦しそうなうめき声が聞こえてきた。

喉に圧かけたように苦しそうな「あぁぁ~~~…」て感じ。
そしたらオレの目から涙が大量に溢れてきた。これでもかってくらい溢れ出てくる。
体は動いたので電話を切ってトラックを左に寄せて止めて、呼吸をしてなんとか落ち着いた。
すぐに嫁から電話きたけど、もう話しする気にならずに「後で話す」と言って電話を切った。
 
翌日、帰りに同じ道を通って確認したけど、その場所には仏壇どころか木も生えてない。
思い出すと鳥肌たちます。

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